
- 等覚院の本堂まえから、仁王門をのぞむ

- 妙楽寺山門
初夏を感じさせる陽ざしのなか、「つつじ寺」・「あじさい寺」を訪ねた。どちらの寺も川崎市民にはよく知られている「花」の名所である。ゴールデンウィークにはつつじは満開をむかえ「あじさい寺」には牡丹が咲ききそう。薫風にさそわれて歴史的にも由緒ある二ケ寺をたずねた。
今回は出発が溝ノ口からなので、最初に「つつじ寺」として知られる、天台宗・神木山等覚院・寺号、長徳寺の山門をくぐった。両側の仁王像がにらみをきかす。見上げると本堂へと続く階段に緋色のつつじ群が、目にやきつく。この山門は16代住職、多々良玄心が建立したとわかっている。当時、豊かとはいえない一帯の村人の寄進によるもので、「玄心和尚の人望が伺い知れる」と、現住職の中島有淳さんは話す。本堂は安政3年建立のものが現存。しかし開山はわかっていないという。「亀元と読み取れる年号の位牌があるのでおよそ1000年の歴史はあるのでは」と想像しているそうだ。同寺は「緑を守る会」のボランティア8名が本山の風光明媚な境内と森の整備維持に力をそそいでいる。本尊は秘仏「不動明王立像」があり、市の重要歴史記念物に木造「薬師如来坐像」などがある。
等覚院本堂の右手には整備された山道がある。5分ほどで登りきると尾根道に出る。右にゆくと高根森林公園、緑が丘霊園へとつづく。「あじさい寺」こと天台宗・長尾山妙楽寺へは左手にすすむ。長尾丘陵の北端にある寺までは、道中の景色も楽しめる。
下り坂にさしかかると妙楽寺の八重桜が、花びらを散らしているのが見えた。紫陽花には早いが、牡丹を知るひとが訪れており、さかんにシャッターをきっていた。近年の研究により、同寺は中世初期には存在し、鎌倉幕府創世記には長尾にあったとされる。土蔵に安置されていた木造薬師如来両脇侍像(市の重要歴史記念物)修理のさい、胎内より重要な墨書銘が発見され、同地域にあったとされる源頼朝ゆかりの寺、威光寺との因果関係がわかったことによる。山寺の風情を残しつつ、境内は手入れの行き届いた「庭園」になっている。本堂右わきには水琴窟(すいきんくつ)があり澄んだ音色にいやされる。はき清められた境内には千株もの紫陽花が開花時季をまっている。
□神木山等覚院(しぼくさんとうがくいん)毎朝6時からの勤行(20分)は公開で、だれでも自由参加。
□長尾山妙楽寺(ながおさんみょうらくじ)写経の会を毎月第一土曜日午前10時より。
第二、第三水曜日にはご詠歌の会午後1時より。いずれも自由参加。
散策をかね、シニア世代には参加をおすすめしたい。