映画監督の千葉茂樹氏(以下監督)に、バチカンから「マザーテレサの列聖式」の招待状が届いた。
第22回KAWASAKIしんゆり映画祭2016で、「マザー・テレサと生きる」が上映され、トークショーの取材と監督へのインタビューを行った。
・映画のあらすじ
舞台は、東京・山谷にあるホームレスのホスピス「きぼうのいえ」。入院中の井沢を、20年間探したという医療相談員が訪れた。彼が毎号欠かさず俳句を投稿してきた季刊誌「なかま」70冊を持参し、句集を作ると言う。感極まった井沢は泣き崩れ・・
この話は、マザーの精神を受け継ぐブラザー夫妻が運営するきぼうのいえで起きた実話である。
●監督とスクリプター白鳥あかねさんのトークショー 劇場のスクリーンに、列聖式が映写され、二人のトークが始まった
白鳥 私が最も心を動かされたのは、あの山谷の俳句を詠む男性。別にカトリックに
帰依したわけでもない。逆境にありながら!どん底にいながらも、自分の精神
性を保っている。これがすごいなと思った。
中略
白鳥 千葉先生はよくぞあの男性を発見しましたね。
監督 あ~あれね。発見というより出逢いなんです。20年間行方不明だった井沢
さんが山谷に戻った。きぼうのいえが出来た。私達も撮影に訪れた。
ドキュメンタリーは、俺たちの手に負えないという時に、突然登場人物が増え、
予想もしない方向に向かっていく。医療相談員の登場は正にそうなんです。
白鳥 監督は、井沢さんを主人公にすることで、逆にマザーの精神を描かれた。
私が関わるドラマは架空の世界でしょ。実話の持っている強さ!こ
れが実は真実だという!そこのところが痛く心を打つんですね。
監督 「スラム秋/生涯かけた/マザー逝く」
井沢さんの句です。マザーが亡くなったとき、二度も三度も泣いたって言って
ましたね
●楽屋でインタビュー
・マザーに叱られた監督
カルカッタの「死を待つ人の家」で、床掃除を手伝った。マザーが入ってきて「あなたは、この場所を映画にして、世界中の人々に知らせたいとやってきた。床掃除を止めて、ホテルで休んでください」と言われた。
「厳しい一面、ともかく人間的に面白い人。時々、周りの人たちがどっと笑うようなことを言って・・」と懐かしいそうに語った。
・千葉茂樹氏(83歳) 映画監督・脚本家/日本映画大学特任教授。しんゆり映画祭2016代表。「マザー・テレサとその世界」(1979)で、初めて日本にマザーテレサを紹介した。キネマ旬報文化映画作品賞など国内外で多数受賞
ドキュメンタリー談義で盛り上がったトークショー
列聖式で三代目総長と日本人シスター トークショーで説明
会場側の街路樹、モミジバフウ
列聖式の招待状が、なぜ映画監督に届いたのか。素朴な疑問が取材のきっかけだった。聖マザー・テレサの情熱を40年以上伝え続けた事も考えられる。
また監督とスクリプター(撮影現場の総合記録係)の対談も素晴らしい。あの聞き手があって、よりドキュメンタリー映画の面白さを再認識した。
会場近くで見た濃紅色の珍しい街路樹。地元の友人お勧めの「紅葉葉楓(モミジバフウ)も必見です。
吉川眞沙美
「大きなことをするのではなく、どれだけ愛を込めて尽くすか」 マザー・テレサ